診断書が必要な労災保険給付は?作成時の費用負担や医師に依頼するときの注意点も解説!
労災保険の給付申請には、多くの場合、医師による診断書や証明書が必要です。
給付の種類ごとに適切な書類を正確に準備することが求められ、診断書の作成費用についても知識が必要です。
本記事では、労災保険給付についての基本的な知識がなく、手続きに不安を感じている方に向けて、診断書の重要性やその費用、申請時の注意点をわかりやすく解説します。
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労災保険給付で必要となる診断書等の種類
労災保険給付を申請する際に必要となる診断書や証明書には、以下の3種類があります。それぞれの役割と取得方法について説明します。
医師の診断書は、労働災害による怪我や病気がどのようなものであるかを詳細に記載した書類です。
この診断書は、障害(補償)給付や傷病(補償)年金などを受け取るために必要です。
診断書には、被災者の身体的状態や治療内容、労働災害によって生じた障害の程度などが記載されます。
医師の死亡診断書は、労働者が亡くなった場合に、その死因や死亡日時を証明するために必要です。
この書類は遺族(補償)給付を申請する際に使用されます。
死亡診断書は、通常、病院で発行されます。
医師等の証明は、医師だけでなく薬剤師、はり師、訪問看護事業者などが発行できる証明書です。
これは、特定の療養や治療が行われたことを証明するために使用されます。例えば、療養(補償)給付を申請する際に必要となることがあります。
診断書・請求書の書式について
労災保険給付に関する主要な様式は、厚生労働省のウェブサイトからダウンロードできます。このサイトでは、各種給付申請に必要な様式を提供しており、直接入力可能なPDF形式で入手可能です。
労災の診断書はどこで手に入れる?
労災の診断書は、通常通院している病院で作成してもらいます。診断書には決まった様式があるため、厚生労働省のホームページからダウンロードして持参するとスムーズです。
医師の診断書が必要になる労災保険給付
障害(補償)等給付
障害(補償)等給付は、業務上または通勤による事故や疾病が治癒した後に、身体に一定の障害が残った場合に支給される給付です。
申請には、医師による診断書が必要です。この診断書は、障害の有無やその程度を医学的に証明するために使用されます。
申請書類としては、「障害補償給付支給請求書」(様式第10号)が必要です。
傷病(補償)等年金
傷病(補償)等年金は、負傷や疾病が療養開始後1年6カ月経過しても治らず、傷病等級に該当する場合に支給される年金です。
申請には医師の診断書が必要で、この診断書は傷病の状態を詳細に記載したものです。必要な書類は下記です。
書類としては、「傷病補償年金支給請求書」(様式第16号の2)が必要になります。
介護(補償)等給付
介護(補償)等給付は、障害(補償)等年金または傷病(補償)等年金を受けている方で、一定の障害によって現に介護を受けている場合に支給されます。
申請には、医師または歯科医師による診断書が必要です。
申請書類として、「介護補償給付支給請求書」(様式第16号の2の2)が必要となります。
マッサージ等を受けたときの療養(補償)等給付
マッサージやはり・きゅうなどの施術を受けた場合には、労災保険から療養(補償)等給付を受けることができます。
この際には、医師の診断書だけでなく、施術を行った先生(はり師、あん摩マッサージ指圧師など)の証明も必要です。
これらの証明は、施術が行われたことを確認し、保険給付の対象とするために用いられます。
申請には「療養補償給付たる療養の費用請求書」(様式第7号(3)、(4))が使用されます。
死亡診断書が必要になる労災保険給付
遺族(補償)等給付
遺族(補償)等給付は、労働者が業務または通勤が原因で死亡した場合に、その収入で生計を維持していた遺族に支給される給付です。
この給付には、遺族(補償)年金や遺族(補償)一時金などがあります。申請には、被災労働者の死亡の事実及び死亡の年月日を証明するために、医師による死亡診断書が必要です。
業務災害の場合は「遺族補償年金・複数事業労働者遺族年金支給請求書」(様式第12号)、通勤災害の場合は「遺族年金支給請求書」(様式第16号の8)が必要です。
葬祭料
葬祭料は、労働者が労災によって死亡した場合に、その葬祭を行った者に支給される費用です。
業務災害で死亡した場合には「葬祭料」、通勤災害で死亡した場合には「葬祭給付」として支給されます。
申請には、被災労働者の死亡の事実および死亡の年月日を証明するために、死亡診断書が必要です。
【申請書類】: 業務災害の場合は「葬祭料請求書」(様式第16号)、通勤災害の場合は「葬祭給付請求書」(様式第16号の10)を使用します。
これらの手続きにおいて、正確な書類の準備と提出が重要です。
医師等の証明が必要になる労災保険給付
療養(補償)等給付
療養(補償)等給付は、業務上または通勤による傷病の治療にかかる医療費を補償するものです。
通常、労災保険指定医療機関で診察を受けた場合、医師の証明は不要であり、事業主の証明のみで手続きが可能です(様式第5号)。
しかし、指定医療機関以外で診療を受けた場合には、医師の証明が必要となります。
労災指定病院を調べるには、厚生労働省が提供する「労災保険指定医療機関検索」サービスを利用するのが便利です。
このオンライン検索ツールでは、医療機関の名称や所在地、診療科目などから、最寄りの労災指定医療機関を簡単に見つけることができます。
具体的な手順としては、以下のリンクからアクセスし、必要な情報を入力して検索を行います。
この検索を活用することで、自宅や職場に近い指定医療機関を事前に確認し、万が一の際に迅速に対応できるよう準備しておくことができます。
薬局で薬剤の支給を受けた場合や訪問看護を受けた場合の療養(補償)等給付
薬局で薬剤の支給を受けたり、訪問看護を受けたりした場合も、療養(補償)等給付の対象となります。
この際には、医師等(薬剤師や訪問看護師)の証明が必要です。
申請には「療養補償給付たる療養の費用請求書」(様式第7号(2)、(5))が使用されます。
休業(補償)等給付
休業(補償)等給付は、業務上または通勤による傷病で労働ができず、賃金を受けられない期間に支給されるものです。
申請には医師の証明が必要で、「労働できないこと」を客観的に示すために診断書が求められます。
具体的には、「休業補償給付支給請求書」(様式第8号)に医師の証明を添付して提出します。
これらの手続きにおいては、正確な書類の準備と提出が求められます。
診断書や証明にかかる費用負担
診断書費用が返金される労災保険給付
労災保険の給付申請において、診断書の作成費用が返金されるケースがあります。
特に、障害(補償)等給付や傷病(補償)等年金の申請時には、診断書の費用が労災保険から給付されます。
これらの診断書費用は上限4,000円と定められており、超過分は自己負担となります。
ただし、令和2年度からは労災保険指定医療機関で直接請求が可能になり、労働者が立て替える必要がなくなっています。
休業(補償)等給付は証明費用が給付される
休業(補償)等給付を申請する際には、医師の証明が必要です。
この証明にかかる費用も労災保険から給付されます。『証明料の上限は2,000円』であり、これを超える分は自己負担となります。
療養(補償)等給付は証明費用が自己負担の場合あり
療養(補償)等給付を申請する際には、医師の証明が必要ですが、労災保険指定医療機関以外で受診した場合、その証明にかかる費用は自己負担となる場合があります。
指定医療機関で受診した場合は、通常その費用を医療機関側が負担します。
会社や保険会社に出す診断書は自己負担
会社や個人で加入している保険会社に提出するための診断書は、労災保険の対象外となり、その費用は自己負担となります。
会社や保険会社から要求された場合には、事前に費用負担について確認することが重要です。
診断書の作成にかかる期間
一般的な目安は2週間
診断書の作成期間は、依頼先の医療機関やその時の状況によって異なりますが、一般的には2週間程度を見込んでおくと良いでしょう。
医師のスケジュールや病院の処理能力によっては、さらに時間がかかる場合もあります。しかし、多くの場合、この期間内に診断書を受け取ることができます。
後遺障害の診断書は時間がかかる
後遺障害に関する診断書は、通常の診断書よりも作成に時間がかかることがあります。
これは、後遺障害の評価には詳細な検査や観察が必要となるためです。通常、後遺障害診断書の作成には『1カ月程度』を要することがあります。
このため、後遺障害に関する申請を予定している場合は、早めに医師に依頼し、余裕を持って準備することが重要です。
医師に診断書を依頼するときの注意点
虚偽の記載事項は依頼できない
診断書を依頼する際には、虚偽の記載を依頼してはいけません。
診断書は医師が医学的知見から作成するものであり、正確な情報が記載されることが重要です。
虚偽の内容を含む診断書は、法的な問題を引き起こす可能性があり、信頼関係を損なうことにもつながります。
後遺障害に関する診断書は特に注意が必要
後遺障害の診断書は、後遺障害等級の認定に大きく影響します。そのため、症状を具体的に医師に伝え、必要な検査を受けることが重要です。
診断書の内容が認定結果を左右するため、正確で詳細な記載が求められます。適切な後遺障害等級を得るためには、医師とのコミュニケーションをしっかりと行いましょう。
セカンドオピニオンを視野に入れる
診断結果や治療方針に不安がある場合は、セカンドオピニオンを検討することも一つの方法です。
別の医師による意見を聞くことで、より納得のいく治療方針や診断内容を確認できる場合があります。
記載内容を弁護士に相談する
診断書の内容について不安がある場合や、後遺障害等級認定に関して疑問がある場合は、弁護士に相談することも有効です。
特に交通事故などで賠償金額に影響する場合には、専門の弁護士からアドバイスを受けることで、適切な対応ができるようになります。
弁護士は法律的観点から必要な情報や手続きをサポートしてくれます。
労災保険申請の一般的な流れ
医療機関を受診し必要に応じて受診料を支払う
労災事故が発生した場合、まずは医療機関を受診します。労災指定医療機関を受診した場合、窓口での治療費の支払いは不要です。
これに対し、指定外の医療機関を受診した場合は、一旦治療費を全額支払い、その後労働基準監督署に申請することで返金されます。
受診時には、労災であることを伝えることが重要です。
労災保険給付の請求書を作成する
次に、労災保険給付の請求書を作成します。この請求書には、事故の詳細や被災者の情報などが含まれます。
必要に応じて医師の診断書も取得し、請求書に添付します。請求書は、厚生労働省の公式サイトからダウンロード可能です。
必要書類を労働基準監督署へ提出する
作成した請求書や必要書類をまとめて労働基準監督署に提出します。
提出後、監督署による調査が行われ、労災認定が進められます。提出する書類には、事業主の証明が必要な場合もあるため、事前に確認しておくと良いでしょう。
労災認定を受け労災保険の給付を受ける
労働基準監督署による調査が完了し、労災認定が下りると、労災保険から給付が開始されます。
給付内容は、療養補償給付や休業補償給付など、多岐にわたります。給付が決定すると、申請者の口座に振り込まれます。
この流れを把握しておくことで、スムーズな手続きが可能となります。各ステップで必要な書類や手続きについては事前に確認し、不備なく進めることが重要です。
まとめ
労災保険給付の申請には、給付の種類に応じて医師の診断書や証明書が必要です。
主な給付には障害、傷病、介護、遺族給付などがあり、申請に際しては厚生労働省指定の書式に基づく診断書が求められます。
診断書の作成費用は、労災保険から給付されますが、上限額が定められており、超過分は自己負担となる場合があります。
申請には最新の情報を確認し、必要書類を正確に準備することが重要です。
書式等は厚生労働省のホームページからダウンロードが可能です。
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