残業の強制は違法になる?違法パターンや残業拒否できるケースを解説!
「残業を強制されるけど、違法なのでは?」と悩みながら働いていませんか。
会社の文化や雰囲気に流されて残業しているものの、どこまでが合法的な残業命令で、どこからが違法なのか、判断が難しいですよね。
この記事では、残業の強制が違法になるパターンや、合法的な残業命令でも拒否できるケースを解説します。
違法な場合の対処法など、自分の身を守る方法が分かりますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
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残業の強制にあたる行為とは?
残業の強制は、従業員の意思に反して時間外労働を行わせることを指します。具体的には、以下のような行為が該当します。
- 特に必要のない残業を指示する
- 仕事を終わらせるまで退社を許可しない
- 定時外に会議やアポイントを入れる
- 残業をしないと評価を下げる
- 残業を断ると仕事を取り上げる
これらは、労働者の権利を侵害し、違法になりかねない行為です。
残業の指示自体は違法ではありませんが、強制的に行わせるのは問題があります。
残業の強制が違法となるパターン5選
残業の強制が違法となるパターンは下記の通りです。
- 残業が労働契約や就業規則に含まれていない
- 残業代が適切に支払われていない
- 残業に「業務上の必要」がない
- 「36協定」の締結など必要な手続きがされていない
- 「36協定」で定めた上限時間を超えている
あなたの状況が当てはまっていないか、1つずつ確認してみましょう。
残業が労働契約や就業規則に含まれていない
労働契約や就業規則に残業に関する規定がない場合、残業を強制するのは違法です。
ただし、多くの会社では「業務の都合により、所定労働時間外に労働を命じることがある」といった文言が就業規則に含まれています。
この場合、残業自体は認められますが、どの程度の残業が許容されるかは別途確認する必要があります。
残業代が適切に支払われていない
残業をさせておきながら、適切な残業代を支払わないのは明らかな違法行為です。
さらに、深夜勤務となる午後10時から午前5時までや、法定休日に労働した場合はさらなる割増賃金が必要です。
これらの規定を無視して残業代を支払わない、あるいは不当に低い金額しか支払わない場合は、残業の強制が違法となります。
残業に「業務上の必要」がない
会社が残業を命じる際は、業務上の必要性が重要です。
例えば、仕事が終わっているのに「付き合い残業」を強要したり、特に緊急性のない業務で必要以上の残業を命じたりするのは、業務上の必要性が認められない可能性が高いです。
残業を命じる際には具体的な業務内容や締め切りなどを明確にし、なぜその残業が必要なのかを説明できる必要があります。
「36協定」の締結など必要な手続きがされていない
残業を行わせるためには、労使間で「時間外労働・休日労働に関する協定」を締結し、労働基準監督署に届け出る必要があります。
36協定は、労働者の過重労働を防ぎ、健康を守るための重要な取り決めです。
協定では、時間外労働の上限時間や対象となる業務の範囲などを定めます。
「36協定」で定めた上限時間を超えている
36協定を締結していても、そこで定めた上限時間を超えて残業を命じるのは違法です。
2019年4月から働き方改革関連法が順次施行され、時間外労働の上限規制が厳格化されました。
原則として月45時間、年360時間が上限となり、特別な事情がある場合でも年720時間を超えることはできません。
この上限を超えて残業を強制すると、会社側に罰則が科される可能性があります。
会社が残業を命じるための要件
ここで会社が残業を命じるための要件を整理しておきます。
- 労働契約や就業規則に残業の定めがある
- 36協定を労使間で結んでいる
- 労働基準監督署へ届け出をしている
上記全てを満たして初めて残業命令を出せるようになるので、それぞれ解説します。
労働契約や就業規則に残業の定めがある
会社が合法的に残業を命じるためには、まず労働契約や就業規則に残業に関する規定が必要です。
この規定により、会社は必要に応じて残業を命じる法的根拠を持つことになります。
ただし、この規定があるからといって、無制限に残業を命じられるわけではありません。
また、就業規則を労働者がいつでも閲覧できる状態にしておくなど、労働者に規定が周知されていることが重要です。
36協定を労使間で結んでいる
36協定は、労働基準法第36条に基づいて結ばれる協定で、残業や休日労働を行わせるために不可欠なものです。
36協定では、以下のような事項を定めます。
- 時間外労働を行わせる必要のある具体的事由
- 時間外労働の上限時間
- 法定休日の労働
- 対象となる労働者の範囲、数
- 協定の有効期間
この協定により、会社が必要に応じて残業を命じられる環境が整います。ただし、協定を結んでいるだけでは不十分で、次の手続きが必要です。
労働基準監督署へ届け出をしている
36協定を締結したら、それを労働基準監督署に届け出る必要があります。
この届け出によって、初めて会社は法的に残業を命じられるようになります。
また、協定の内容に変更がある場合は、その都度新たに届け出をしなければなりません。
労働基準監督署への届け出は原則毎年行われるため、その都度36協定を労使間で締結し直す必要があります。
残業の強制を拒否できるケース
状況によっては、会社の残業命令を拒否できるケースがあります。
- 残業命令自体が違法
- 体調不良
- 妊娠中または出産から1年未満
- 介護または育児
特に心身や家族に関わる事情があると拒否しやすいので、把握しておきましょう。
残業命令自体が違法
残業命令が違法である場合、従業員はその命令を拒否することができます。
違法な残業命令とは、例えば次のようなケースです。
- 36協定を締結していない、または必要な手続きをしていない
- 36協定で定めた上限時間を超えている
- 適正な割増賃金を支払っていない
- 業務上の必要が認められない
これらの場合、従業員は「この残業命令は違法なので従えません」と拒否することができます。
会社との争いに発展する可能性があるので、拒否する際は冷静に伝え、必要に応じて証拠を残しましょう。
体調不良
体調不良の場合、残業拒否の正当な理由となります。
体調不良を理由に残業を断る際は、できるだけ具体的に状況を説明することが大切です。「頭痛がひどくて、これ以上仕事を続けるのは難しい」といった形で伝えましょう。
ただし、頻繁に体調不良を理由に残業を断ると、信頼を失う可能性があります。
普段から健康管理に気をつけ、体調不良の際は早めに上司に相談するなどの対応が望ましいでしょう。
妊娠中または出産から1年未満
労働基準法では、妊娠中または出産後1年を経過しない女性に対して、時間外労働や休日労働、深夜業を命じることを禁止しています。
したがって、該当する従業員は合法的に残業を断れます。
なお、本人が請求し、医師が支障ないと認めた場合は例外的に残業などが認められることがあります。
介護または育児
介護や育児の責任がある従業員も、残業を拒否できる正当な理由があります。
育児・介護休業法により、小学校就学前の子どもの養育や、要介護状態にある家族の介護を行っている場合は、時間外労働や深夜業の制限を請求できます。
これらの制限を請求した従業員に対し、会社は制限を超えた残業を強制できません。
残業の強制がパワハラになることも
残業の強制は、状況によってはパワーハラスメントに該当する可能性があります。
特に以下のような場合は、パワハラと判断される可能性が高くなります。
- 必要性のない残業を繰り返し強制する
- 残業を断ると叱責したり、怒鳴ったりする
- 残業を断った従業員を孤立させたり、仕事を与えなかったりする
- 「残業をしないとクビにする」などと脅す
残業の指示自体は業務命令として認められますが、その方法や頻度、内容によっては違法になります。
もし残業の強制がパワハラに該当すると感じたら、会社の相談窓口や人事部門に相談しましょう。外部の労働相談窓口を利用するのも1つの選択肢です。
残業を強制されたときの対処法
残業を強制されたときの対処法は下記の通りです。
- 残業強制の違法性を検証する
- 残業拒否の正当な理由があるかを確認する
- 上司に相談する
- 労働基準監督署へ申告する
- 弁護士へ相談する
- 退職を検討する
残業強制の状況やあなたの意向によって、どこまで対処するかを考えてみましょう。
残業強制の違法性を検証する
まず、その残業命令が本当に違法なのかを確認することが大切です。
違法性が確認できたら、上司や人事部門に対して具体的にどの点が法律に抵触しているかを説明し、改善を求めます。
会社側の反応が芳しくない場合は、労働組合や専門家に相談するのもよいでしょう。
残業拒否の正当な理由があるかを確認する
正当な理由があれば、残業を拒否することができます。
- 体調不良や健康上の問題
- 妊娠中または産後1年未満
- 家族の介護や育児
これらの理由がある場合、上司に状況を説明し、残業を断ることができます。
業務量の問題などでどこかで残業が必要な場合、特定の日の出勤時間を早くしたり、他の日に残業するなどの代替案を提案するのも一案です。
上司に相談する
残業を強制されたときは、直属の上司に相談するのもよいでしょう。
例えば、「毎日のように残業が続いて体調を崩しそうです。業務の効率化や優先順位の見直しなどで、残業を減らせないでしょうか」といった形で相談するのが効果的です。
上司で解決できない場合は、人事部門やさらに上の担当長に相談する手もあります。
労働基準監督署へ申告する
社内での解決が難しい場合、労働基準監督署への申告も検討できます。
申告の際は、具体的な事実や状況を整理して説明するとともに、可能であれば証拠を用意します。
匿名での申告も可能なものの、詳細な調査のためには実名での申告が望ましいです。
申告したことで会社から不利益な取り扱いをするのは禁止されていますが、感情的な対立は懸念されるので注意しましょう。
弁護士へ相談する
問題が深刻化したり、法的な対応が必要と判断した場合は、労働問題に詳しい弁護士に相談しましょう。
弁護士に相談すると以下のメリットがあります。
- 専門的な法律知識に基づいたアドバイスが得られる
- 具体的な対応策を提案してもらえる
- 会社との交渉や法的手続きを代行してもらえる
弁護士への相談は費用的にも精神的にもハードルが高いですが、無料の初回相談や、日本弁護士連合会などが提供する弁護士紹介サービスが利用しやすいです。
退職を検討する
残業の強制が続き、改善の見込みがない場合は、最終手段として退職の選択肢があります。
ただし、退職は重大な決断です。検討にあたっては、本当に改善不可能かどうか、転職先の見通しはつくかをよく考えましょう。
退職を決意した場合は、未払い残業代の請求や有給休暇の消化などを含め、専門家に相談するのがおすすめです。
そもそも残業とは?
ここまで残業の強制について解説してきましたが、そもそも「残業」とは何かも詳しく説明します。
- 時間外労働と休日出勤
- 36協定での残業時間の上限は月45時間
- 36協定の特別条項で上限を伸ばせる
- 36協定の法改正の経緯
- 36協定に違反すると会社に罰則がある
比較的細かな項目が多いものの、残業への理解が深まるので読んでみてください。
時間外労働と休日出勤
残業は、法律上「時間外労働」と呼ばれ、労働基準法で定められた労働時間を超えて働くことを指します。また、法定休日に働くことを「休日労働」といいます。
時間外労働と休日労働は、従業員の健康や生活に大きな影響を与える可能性があるため、法律で厳しく規制されています。
また残業に伴う割増賃金として、通常の残業で25%以上、深夜残業なら50%以上、休日労働の場合は35%以上の支払いが必要です。
36協定での残業時間の上限は月45時間
原則として、残業時間の上限は月45時間、年360時間となります。
この上限は、従業員の健康を守り、ワークライフバランスを確保するために設定されています。
休日労働についても、日数を定めておく必要があります。
36協定の特別条項で上限を伸ばせる
36協定には「特別条項」という仕組みがあり、これを使うと通常の上限を超えて残業を命じることができます。
特別条項付の36協定で定められる上限は以下の通りです。
- 年720時間
- 休日労働を含めて月100時間
- 45時間を超える月が年6回
- 休日労働を含めて2~6か月の平均80時間
特別条項を結ぶ際は、なぜその業務が長時間労働を必要とするのか、具体的な理由を示す必要があります。
36協定の法改正の経緯
36協定に関する法改正は、長時間労働による健康被害や過労死問題への対策として進められてきました。
2020年からは中小企業にも上限規制が適用されています。
改正により残業時間に明確な上限が設けられ、企業は従業員の労働時間管理をより厳格に行う必要が出てきました。
法改正の背景には、日本の長時間労働文化を改善し、労働生産性を向上させるという狙いがあります。
36協定に違反すると会社に罰則がある
36協定に違反して従業員に残業をさせると、会社側に罰則が科されることがあります。
これらの罰則は、経営者や事業主が対象となります。
特に企業名の公表は企業イメージの低下につながる可能性があり、会社に36協定を遵守させる効果が期待できます。
従業員の健康を守り、働きやすい職場環境を整えることが、長期的には企業の成長にもつながります。
違法な残業の強制に関してよくある質問
最後に、違法な残業の強制についてよくある質問に回答します。
- アルバイトやパートは残業を強制される?
- 派遣労働者は残業を強制される?
- 違法でない残業命令は断れない?
- 残業を拒否し続けると解雇される?
- 残業代が出ない場合はどうするべき?
- 残業を強制すると犯罪になる?
それぞれ詳しく解説するので、あなたの状況に該当する場合はチェックしておきましょう。
アルバイトやパートは残業を強制される?
アルバイトやパートタイム労働者も、正社員と同様に労働基準法で保護されています。
残業を求められた場合、雇用条件に残業が明記されているか、36協定が締結されているかを確認し、該当しなければ拒否できます。
また、学業との両立が困難になるなど、正当な理由がある場合も残業を断れます。
ただしシフト制で働いている場合、シフトに入っている時間内での勤務は「残業」ではありません。
派遣労働者は残業を強制される?
派遣労働者の場合、残業に関する取り扱いが少し複雑です。
派遣先企業が残業を命じるためには、「派遣元」の就業規則や労働契約で残業が認められ、「派遣元」が派遣労働者と36協定の締結・労働基準監督署への届け出を行う必要があります。
派遣労働者は、残業に関して不安や疑問がある場合、まず派遣元の担当者に相談するのがよいでしょう。
違法でない残業命令は断れない?
合法的な残業命令であっても、一律に断れないわけではありません。
ただし、頻繁に残業を断ると業務に支障をきたす可能性があります。そのため、上司と話し合い、業務の調整や効率化を図ることが重要です。
また、残業を断る際は理由を明確に説明し、可能であれば代替案を提案するのがよいでしょう。
残業を拒否し続けると解雇される?
残業を拒否し続けることで直ちに解雇されるリスクは低いですが、状況によっては問題が生じる可能性があります。
例えば残業拒否の理由が正当といえるか明確でない理由の場合、業務に支障をきたすほど頻繁に残業拒否をすると、会社から懲戒や解雇を主張されるかもしれません。
もし残業拒否を理由に不当な扱いを受けた場合は、人事部門や労働組合、外部の相談窓口に相談しましょう。
残業代が出ない場合はどうするべき?
残業代の不払いは労働基準法違反です。残業したのに残業代が支払われない場合、堂々と会社に請求すべきです。
まず残業時間を正確に記録し、給与明細に残業代が反映されているか確認します。反映されていなければ、会社に状況を説明し支払いを求めます。
未払い残業代は退職後でも請求できるので、心当たりがあれば検討してみましょう。
残業を強制すると犯罪になる?
残業の強制自体が直ちに犯罪になるわけではありません。
しかし、36協定を締結しない、労働者の意思に反して強制的に残業をさせたなどの行為があれば、違法となる可能性はあります。
会社は、残業を命じる際には適切な手続きを踏み、労働者の権利を尊重する必要があります。
また、労働者の健康と安全を守るため、過度な残業を避けるよう努めるべきです。
まとめ
会社が残業を命じるには、36協定の締結や手続き、諸規定が必要です。
また残業代の支払いや業務上の必要性などが欠ければ、残業の強制は違法になります。
違法な残業を強制された場合には、証拠の収集とともに外部の専門家への相談を検討しましょう。
残業に関する正しい知識を知ることで、あなたの権利を守り、健康的に働ける可能性が高まりますので、この記事を参考に残業の強制に対処してみてください。
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